※この記事はFC2ブログ時代の2023/07/17に書いたのを転載したものです

今日の記事は雑談です・イラストはありません

たまたま用事があって外出してたところにTwitter でジブリの新作が本日(7/14)公開すると見かけて、予定にはなかったけど、完全にその場のノリで映画館まで足を運びました。
他の方が危惧していた「宮崎駿の説教」を聞かされる感じは全くなく、全体的にファンタジーあふれる幻想的な作品でびっくり。

以下、ネタバレ&非常に汚い表現もあるので注意
解釈が違う可能性も大いにあります、あくまで個人の感想なので話半分に聞いてください。 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

まず、てっきり「鳥に憧れて飛行機を造る中世ヨーロッパ風のファンタジー世界の少年の話」くらいに思っていたのが、 時代背景は昭和の第二次世界大戦日本と分かり、 空襲を受ける場面からスタートしたのがいい意味で早速期待を裏切らる。

序盤の出征兵士を送る行進や、戦車数台のパレードもこの時代背景を説明するとともに、その絵面が使い古されたようなステレオタイプにならないようひと手間二手間加えてるところはさすが巨匠だと痛感。95式軽戦車を登場させるのはセンス良すだし、ダットサンや人力自転車?が出てくるところがまたちょっと変わっていて見てる側を飽きさせない。

で、大まかな テーマとして自分が感じ取ったのは「目の前の現実から逃げたい、でも現実に向き合って生きていこう」なんじゃないかと。
例えば転校先でいじめられた主人公。喧嘩のあと自ら石でこめかみを打ち付け怪我をした。 最初あれは怪我を大事にしていじめたやつらへのリベンジなのかな?と思ったけど、 それは違うみたいでどうやら「学校へ行かないで済む為の自傷」というのが狙いなんじゃないかとわかる。新しいお母さんができて、お父さんはその人とくっついてしまうし、 自分の弟か妹も生まれるというナイーブな出来事がこの多感な年頃の男の子に一気に襲いかかってきて、あろうことか同級生からいじめまで受けてしまったら現実から目をそむけたくなるのは当然なんじゃないか。 ただでさえ世の中は戦時中なわけだし。
で、 そんな主人公を「あっちの世界」へ誘い出すアオサギが登場。あ、この声は菅田将暉だな?とすぐにわかった。癖はあるけど好演だったんじゃないでしょうか。

行方不明になった継母のナツコさんを探しに、モブキャラの一人だと思ってたおばぁさんまでくっついてきて、 2人は罠だと知りつつも「あっちの世界」へ足を踏み入れる。 ずんずん 進んでいく主人公とは裏腹に、怯えるおばあさんがちゃんとしたツッコミ役として良い味を出している。奇々怪々な事が起こっても、このおばぁさんが驚いたり不思議がって視聴者の気持ちを代弁してくれる。このおばあさんがいるから見てる側は置いてけぼりにならない。

それで完全に足を踏み入れたあっちの世界。 船に乗った男勝りな女性が話しかけてきて、 実は正直この辺から少し疲れてきた。ここまでは飽きが来ない演出の連続にワクワクしてたけど、そこからさらに世界が急激に広がったのでちょっと「お腹いっぱい」になってしまった感が自分の中であった。
日本人になじみ深い地獄、三途の川、とはかなり違う世界観で、それはそれでいいんだけどちょっと理解するのに時間がかかった。

でもペリカンが大量に出てきたり羽ばたいたりする描写はすごかった。何というか感動を通り越して恐怖すら覚えるレベル。最初から最後までこのクオリティのアニメーションが続くんだから世界一のアニメーション会社の健在ぶりを改めて実感。 

急に見かけなくなったのと、ぶっきらぼうな態度からもしやと思ったけど、 この女性があのモブおばぁさんだったというのは面白かった。 若い頃はかっこよかったんだな。 タバコとか吸ってればもっとキャラが立ってたかも。
で、ヒミ様登場。後々この人が実のお母さんだったと知るわけだけど、 お母さんが現世に生まれて 空襲で焼け死んで?またこの世界に戻ってヒミ様をやっていて新たに生まれる子供たちを守っている?こういう解釈でいいのかな?あの世は現世と時間の概念が異なってるという話もあるので、生まれて主人公を産んで空襲で火をまとってこの世界にヒミとして戻ってきて・・・。 だめだ話がややこしくなってきた。 

この辺りで昔見た新海誠作品「星を追う子ども」を思い出す。すごく展開が似てる。 でも あれは「頑張ったけどダメでしたエンド」なのでそうはならないで欲しいと強く願った。そしてあれもあっちの世界に行ってからの展開がすごく長く、その辺はしんどかった記憶がある。 

アオサギと合流しナツコさんを探す旅を続ける。主人公たちは森を抜けたり空を飛んだりと・・・あ、やっぱ長い。「星を追う子ども」だ。映画としては120分なので別段長くはないのだけど、長く感じてしまうのだ。例えば桃太郎だったら主人公が旅に出て犬猿雉が仲間になったら次は鬼ヶ島かな?って なんとなく「今が物語のどの辺なのかがわかる」んだけど、完全にオリジナルのデザインと設定でどこまでこの世界が続くのか見てる側からすると見当もつかないので、長く感じてしまうのだ。 旅立つ直前にナツコのいる塔への道のりの地図を見せてくれるだけでも結構違うかもしれない。でもアオサギと主人公のやり取りや 関係性がなかなか面白くて、 このコンビ意外と良いなと思った。

鍛冶屋の家でインコに襲われるシーンは怖くて鳥肌が立った( 鳥だけに)。この可愛らしいデザインの生物に食われそうになる鬼気迫る演出はほんと素晴らしい。 でもこの世界って食べられたり死んだりしたらどうなるんだろう?

そして舞台は終盤(といっても見てる側からすると終盤なのかわからなかったが)、ナツコのいる塔へ。溢れんばかりのインコ達に見てる側もハラハラする。 紆余曲折を経てナツコと再会。最初は拒絶するナツコも結局主人公と同じだった。新しい息子と新しい生活と授かった新しい生命、 とてもナイーブな状況で、果たして自分はうまくやっていけるのか、現実から目を背けたい、そんな感情が彼女をこの世界に呼んでとどまらせたのかもしれない。 でもここで 主人公が彼女のことを「母さん」と呼ぶ。この瞬間主人公が現実を受け入れ、生きていこうという決心を表に出したんじゃないかと。その決心にナツコも心を動かされたのがわかる。

で、その後に登場するギガゾンビみたいな爺さん。多分これ(と、主人公)が宮崎駿監督自身なんじゃないかと感じる。突然積み木の話をし始めて「これでやっと1日もつかどうか」「え? これでやっと1日なの?」と これまた突然飲み込みの良い返答をする主人公。「え? どういうことなんだい?」 って ここで本当は ツッコミ役のモブおばぁさんがいれば見てる側も置き去りにされないで済んだんだけど・・・。
おそらくだけどこのギガゾンビ(大叔父)もまた現世よりあっちの世界を選んだ人間で、同じ血筋をもつ者だけがの後継者となれる( 謎ルール)ので、 同じく現世に絶望した主人公(とナツコ)を跡継ぎとしてこの世界に招き入れたんじゃないか、 そういう魂胆なんじゃないかと。

実はこの時後継者になることを主人公が承諾してしまったらどうしよう、と危惧していた。 でもそんなバッドエンドはさすがになくて安堵。ラストの見せ場としてインコ大王との剣を使った一騎打ち を期待してたんだけど、大王はこの世界を壊す一役を買うために後ろからついてきたんだと知る。ヒミを守るため、 またはナツコを守るために一戦交えてほしかったなぁ、 そしたら もうちょっと後半の盛り上がりとエンターテイメント性が上がったと思うんだけど。
大叔父の「この世界は悪意で溢れてしまっている。もうもたない」というのは、この世界自体が現世が嫌で避難してくる者の 受け皿となってるようで、そんな負の感情を持った者(鳥?)がこの世界の中で増え続ければ やはりいつかは増長して溢れてしまう。
 でも主人公がした決断はその世界を救うことではなく維持することでもなく「脱出して現実を生きていこう」だった。これでよかった。

最後に3人であっちの世界から帰還するシーンは色とりどりのインコをまとって最高にかっこよかった。ナツコが鳥のフンまみれになってはしゃぐシーンは「現世も悪くないかも」と少し安心した表現だったのかも。 そして主人公たちを助けに来た一本気あふれるお父さん、私はめっちゃ好きです。 社会的にも成功して財力もあって家族も守れる、その分敵も多そうだけど男らしくて魅力あふれるキャラの一人に感じました(声もキムタクだし)。 

最後は家族4人で東京へ帰郷。 この頃には家族も仲良く、主人公も新しいお母さんも現実をしっかり生きてるという描写がわかり、ハッピーエンド。氏の作品はナウシカも魔女宅ももののけも千と千尋もそうだけど、何かを勝ち取ったとか、誰かと結婚したとかそういうのでなくて「何でもない普通の日常に戻ることができた」がラストの締めくくり として多い。思えば近年のアニメ作品も、鬼になった妹を人間に戻して普通の生活がしたい「鬼滅の刃」や、表面上だけでもいいから普通の家族として取り繕いたい「スパイ ファミリー」みたいな「何でもない普通の日常」をある種の目的として捉える作品が多い気がする。
正規雇用・ 結婚・マイホーム・育児、 昭和の頃は何でもない普通の日常だったものが今となっては叶えるのが難しい代物になった昨今、 普通の日常を追い求める作品がヒットするのは偶然じゃないと感じる。

 ただでさえ昔と状況が違うのに近年ではコロナに戦争まで起きているこの現世。マジで「どう生きるのか」を改めて自分に問いたくなるような作品でした。(明日もあさってもエロ絵描いていくけど)

長文、乱文、雑文、失礼しました。